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ATENEO 改修設計競技

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エンター・アテネオ 国際設計競技案  最終10選

アテネオは1884年に創立された科学、文学、芸術を広めることを目的とする非営利団体である。アテネオの施設は歴史的、芸術的にも価値のある複合建築であり、都市における最高の建築的・都市計画的な保護を受けている。建物を傷めることなく、安価で仮設的、かつ現代的に改修する目的のもと、設計競技が行われた。

■私たちは漁網用のナイロンファイバーを、エントランスホールに充満させることとした。もとあった壁面や彫像は、ナイロンの霧のなかに溶け込み、近づくとぼんやりと浮かび上がり、遠のくとうっすら霧のなかに埋もれてゆく。来館者の位置によって、古いものと新しいものとが混在した、第三の風景を生み出す。

■開館当初よりATENEO de MADRIDは、様々な政治家や哲学者、アーティストたちの活動の場であった。文化的情報を発信する極めて重要な機関である一方、長い歴史のあいだに、この機関のメディアとしての役割を政治利用されたこともある。新たなATENEOの門出に際し、私たちはこれまでの歴史を改めて認識する必要がある。表と裏が併せもつ「表裏一体性」をこのホールに持ち込み、施設の歴史上の性格を、最大の魅力として機能させる。

■近づきやすさ、親しみやすさ、動線計画
The British Museum (設計:Norman Foster)における魅力の一つは、外観と、中庭(Great Court)へ至る動線にある。ぺディメント下の暗がりに浮かぶ中庭の淡い光は、施設に威厳を与え、人々の注意を喚起し、中庭へと誘う重要な要素となっている。

私たちはアテネオのエントランスにおいて、前室にもう一つの前室を挿入する。街路とホールとの間に暗がりをつくり、施設の情報が投影されたスペースとすることで、施設内のプログラムは街に溢れだし、暗がりの奥に浮かび上がる光が、人々に注意を促す。

■現代化
古いものと新しいもの、こうした二項対比によって、従来のリノベーションのように新旧の対比を強調するのではなく、既存施設に大きく手を加えるのでもない、新しいものと古いものを「つなぐ」計画を提案する。

新たなATENEOは、既視感のない、新たな空間を獲得する。

■宣伝 & サイン(用途、活動内容)
新たに挿入される前室(暗室)には情報が投影され、プラド通りに向けて発信される。暗闇の中に浮かび上がるアーチ形の開口部は、昼であってもその魅力を失うことがない。投影される情報は多様性に長け、更新にも柔軟に対応できる。

■可逆性
最小の施工で最大の効果を得ることができるよう、使用材料も最小限とする。アルミチャンネルと漁網用のナイロンファイバーはともに安価で耐用性に優れ、かつ軽量である。簡易な施工、安価な材料による劇的な空間の変化を目指す。アルミチャンネルの規格単位ごとにプレファブ化、運搬後、取付のみの施工とし、解体も容易な計画とする。

■予算
一般的に普及している安価な材料を使用することで、予算は驚くほど抑えることができる。

■構造
天井面に固定したアルミチャンネルからナイロンファイバーが吊るされ、スクリーンを構成する。ナイロンファイバーは直径0.74mm、高さ6.7m、幅1cmピッチで一枚のスクリーンとなり、スクリーンごとの間隔は100mmである。状況に応じた施工が必要だが、どちらにしろ、コストや構法に大きく関わる問題ではない。

■設備
照明: 自動調光による、スクリーンへの照射
プロジェクター:3個
 

2011年

マドリッド、スペイン

地上2階・組積造

 

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